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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁

青空文庫

「お暇を」

といい出しても、

「まあ、もう少しおれ」

とか、

「わしが茶を教えてやる」

とか、

「和歌をやるか。では、わしにもすこし古今調を手ほどきしてくれい。万葉もよいが、いっそこう侘びた草庵の主になってみると、やはり山家集あたりの淡々としたところがよいの」

などといって、離したがらないし、お通もまた、

「大殿さまには、かようなお頭巾がよかろうと思って縫ってみました。おつむりへお用い遊ばしますか」

武骨な男の家来たちには、気のつかない細やかさを尽すので、

「ほう、これはよい」

その頭巾をかぶり、またとない者のように、お通を可愛がるのであった。

月の夜にはよく、彼女がそこでお聴きに入れる笛の音が、小柳生城の表のほうまで聞えて来た。

庄田喜左衛門は、

「飛んだお気に入って――」

と自分までが、拾い物をしたように、欣しく思っていた。

喜左衛門は今、城下から戻って来て、古い砦の奥の林を抜け、大殿の静かな山荘をそっとのぞいた。

「お通どの」

「はい」

柴折を開けて、

「まあ、これは。……さあどうぞ」

「大殿は」

「御書見でいらっしゃいます」

「ちょっと、お取次ぎ下さい。――喜左衛門、ただ今、お使いから戻りましたと」