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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁

青空文庫

「くたばれッ」

樫の棒は唸りを呼んだ。

一撃のもとに、城太郎はそこへ死んでいる筈である。カツンという大きな響きがそれを人々の耳へ直覚させた。

――武蔵は、実に冷淡なほど、なおもその際まで、黙然と腕ぐみしたまま、傍観していた。

ぶん――と城太郎の木剣は、その時、城太郎の手から空へ吹き飛ばされていたのであった。無意識に彼は、最初の一撃をそれで受けたのであったが、当然、手のしびれに離してしまったものらしく、次の瞬間には、

「こん畜生」

眼をつぶって、敵の帯際へ噛ぶりついていた。

死にもの狂いの歯と爪は、相手の急所を制して離さなかった。樫の棒は、そのために、二度ほど空を払った。子供と侮ったのがその者の不覚なのである。それに反して城太郎の顔つきは絵にも描けないほど物凄かった。口を裂いて敵の肉を食いこみ、爪は衣を突きぬいていた。

「こいつめッ」

するとまた一本、べつな樫の棒が現われ、そうしている城太郎の背後から、彼の腰を狙って、撲り下ろそうとした時である。武蔵は初めて腕を解いた。石垣のようにじっと固くなっていた人々の間から、ついと進み出したのが、はっと感じる間もないくらいな行動であった。