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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《故郷七十年(こきょうしちじゅうねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 頁
田山花袋といっしょに照尊院にいた時ある日、田山が、「今日は尾崎さんが来るから迎えに行かなくちゃ」というので、私もどんな人か、まだ尾崎紅葉を知らないので、神橋の傍まで随いて行った。向うから派手な浴衣に、チリメンの兵児帯をだらりと締め、何にももたずに来る二人連れがある。それが石橋思案と紅葉の二人だった。何を履いていたか、履物は憶えないが、いかにもどこか良い衆だなと思われるような暢気な恰好であった。
私もちょっと挨拶はしたことをおぼえているが、どちらかというと、そんな時には反撥をする癖があるので、話はしなかった。
紅葉と思案とは、日光ホテルに泊るというので、田山が案内して行った。ホテルは私らの泊った寺のもう少し奥の方であった。私どもの方はそろそろ懐中が乏しくなってきたので、「もう帰る」といい出したら、田山が「そんなに早く帰られちゃ困る」という。きかずにいると、「それでは国木田を呼ぶ」というわけで、私や中川その他の者が帰った後へ、国木田が行って、二、三カ月も滞在したのであった。このころから、いよいよ小説家になってきたが、それまでの彼は、詩人みたいなことをやっていた。