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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《故郷七十年(こきょうしちじゅうねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 頁
柳田家は寛文年間まで下野の烏山にいたが、飯田の脇坂家が播州竜野へ移った後、堀家にしたがって飯田へついて行った。それ以後の墓所は飯田にあるが、それ以前の旧い墓が烏山にあるにちがいないという気がしていた。しかし父はどうしても行く暇がないので、たしか日露戦争のすぐ後であったと思うが、私と、いま谷中に葬られている甥の矢田部雄吉と、二人で出かけていった。
寺にゆくと、「どうもお気の毒様でした。寺では整理の必要があって、無縁墓を片付けましたので、おそらくお宅様のもないでしょう」といいながら、「火事がありましたが、過去帳はこれだけ残っています」と、過去帳を出してくれた。それを繰ってみると、先祖の戒名がいくつも出てくる。「ここにありますよ。これは私の家の戒名です」こうして戒名は見つけ出し、翌日はお経を上げてもらうことになったが、肝心の墓石がない。「墓石がなくてはねえ」と甥と話しながら、翌朝もう一度寺に行ってみた。
住職が読経の支度をするのを待つ間に、墓石のことを気にかけながら境内をぐるぐる歩いていると、お寺の代々の住職の墓というのがあり、そのすぐ脇をふっと見ると、探していた私の家の戒名がずっと並んでいるではないか。