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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁
いうまでもなく、きょう突然、饗応役を免ぜられて、即日、中国出立をいいつけられたことにたいしては、光秀以上、明智の全家中は、
「理不尽である」
と、いい。
「あまりに酷いお沙汰だ」
と、哭き。
「故意に、われらの主人をお辱めなさるものとしか考えられない」
など、寄々に恨み合い、悲涙をたたえ合い、甲府以来、信長へ対して頓につのらせていた忿懣やら反感に油をそそいで、いまやそれは、危険な発火作用を帯びるやも知れないまでに醸していた。
すでに甲府出征中、下諏訪の陣所で、主人の光秀が、衆人のなかで耐えがたい辱めに遭ったということは、家中全般、隠れもなく知ることであった。どういうわけで右大臣家には近年事ごとにかくも主人光秀をいびり給うのかと、彼らは、親を視るごとく、光秀の苦悩を見て、
「きょうこの頃のおからだの勝れぬのも、無口におなり遊ばしたのも、すべてそのため――」
と、平常一日でも、胸を傷めないで来た日はなかったほどなのである。
きょうの衝動は、いままでのどんな場合よりも、最も大きい。なぜならば、徳川殿という曠の大賓をむかえ、浜松の家中にも、京の貴紳にも、織田家の宿将たちにも、のこらず知れ渡ることだからである。