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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁
行けども行けども、迷いの岐路を見くらべていた。
かつてこの山の盛時を思うと、何という寂寥さであろう。権現川にそい、東塔坂をのぼって行くあいだも、ほとんど、人らしいものには行き会わなかった。
変らないのは、鳥の音ばかりである。ここは古くから百鳥の仙境といわれているほどなので、慈悲心鳥の声もする、仏法僧も稀れに聴かれる。耳をすませば瑠璃鳥、深山頬白、くろつぐみ、駒どり、ひよどり、また昼時鳥までが、谺するばかり啼き交わしているのだった。
「ひとりの僧も見えぬ」
文殊堂の址に立ったとき、光秀は憮然としてつぶやいた。今さらのように、信長の威と、その武力による駆逐の徹底に、愕いたかのような顔いろであった。
「左馬介」
「おつかれでございましょうに」
「なんの。……どうしたものだ。この山上にも、さらに人影はないではないか。中堂のほうへ参ってみよう」
なぜか少なからず失望した様子である。彼としては、いかに信長の表面的な制圧があっても、山徒の潜勢力は、もっと目にも見える復興を山上に現わしているものと思っていたらしいのである。
だが、やがて中堂の焼け跡、また大講堂や山王院や浄土院のあたりを経巡ってみても、そこにはかつての堆い焦土がそのままあるだけであった。