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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁

青空文庫

ただ学寮附近に、山小屋にひとしい幾棟かが建っていて、香煙のにおいもするので、天野源右衛門をして内を窺わせてみたが、四、五の山僧が炉の粥鍋をかこんでいるだけで、

「たずねてみましても、横川の亮信阿闍梨は、これにおらぬ由でございます」

と、いうことであった。

「横川の和尚が不在なれば、たれか以前の碩学とか長老とかはおらんのか」

ふたたび、光秀はそういって、問わせてみたが、源右衛門の伝えて来た返辞には、

「さるお方は、ひとりも山にはおらないそうでございます。山上へまかるにも、いちいち京都詰のお奉行か、安土のおゆるしを得ねば許されず、また山上の常住は、限られた平僧と堂衆のほかは、今なおお認めなき掟とやらで」

それを光秀は聞きながして、

「いや、掟は掟であるが、宗門の熱意というものは、水をかけたら消える火のようなものでは決してない。思うに、われらをやはり安土の武士と見、かたく秘しておるのであろう。横川の和尚はじめ生き残りの長老たちは、いまなお山上のどこかに住んで、平常は人目を避けておるものにちがいない。……決して左様な心配のあるものではないとよく諭して、もういちど訊ねて来い」