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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《梅里先生行状記(ばいりせんせいぎょうじょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 頁

青空文庫

と、ようやく、全姿をせまい土間に見せて、そこへ茶盆と土瓶の湯をおくと、もうあわてて帰ろうとした。

「なんだえ、そんな所へ、置いて」

おかみさんは、たしなめた。――というよりも、この祭に着飾らせたわが娘のすがたを、又四郎へ見せたいのであった。

「上へあがって、お茶でも入れておいでなさい。十九にもなって、三年も人中で奉公もして来ながら、どうしてこの娘はこういつまで、嬰ンぼみたいなんだろう」

母親に叱られてばかりいるつつましい娘は、端目には、その羞恥らいが、なおさら美しく見えた。

お次は、口ごたえもせず、破れ畳のうえに坐って、茶を入れ、茶卓を拭い、やがて又四郎のわきへ、

「すこし、お温うございますが……」

と、そっとすすめてから、

「その後は、ごぶさたばかりしておりまする。いつも、おすこやかで、何よりでございます」

姿態、ことば、水々しさを、その母親たるおかみさんは惚々と見ているのだった。

又四郎も、坐り直して、

「いや、その後は、ついお目にかかる折もなかったが――いま聞けば、もう検校のおやしきにはおられないのだそうだな。それについて、詳しく訊ねたいこともあるが……」