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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《梅里先生行状記(ばいりせんせいぎょうじょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 頁

青空文庫

……あのぶんならまずよかろう。総じて、威なければ、令も行われぬ。一郡元締役たるものが通るとあれば、知らねばぜひもないが、知ったら四辺をはらうくらいな威がなくてはならぬものだ。――里民へ徳をほどこしても、平常、威がなければ、善政もあたりまえに思い、感謝のうすいもの。……まずこの辺は、新右衛門にまかせておいても安心じゃろ」

道は暗くなっている。

ゆるい坂。畑や藪かげの平和な燈火。

微風の折々に、薫々となにがなし匂う。野梅であった。

「おや。林助が……はて?」

悦之進がうしろを見る。老公も気づかれて、

「いつのまにか、おらんの。どこで遅れたか」

と、見まわしていた。

江橋林助は、すぐ坂の下から駈けあがって来た。何していたかと訊ねられて、

「この下の河べりに、怪しげな男の影を見ましたので、糺しておりました」

と、答え、

「油断はできぬ」

と、つぶやいた。

聞きとがめて、又四郎が、

「浪人ていの者か」

「いや、旅商人といった」

「ことばは?」

「江戸者」

「ひとりか」

「ひとり」

「何していたのだ」

「脚をいためたので、休んでいるというた」

「変だな。……そしてそのまま戻って来たのか」