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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁

青空文庫

四方は削り立った岩面、上へのぼる手がかりもないので、小柄をもって、一段一段足掛けを掘りこの通り……」と、赤土にまみれた衣服を示して、

「やっとの事で、這い上がってみますと、そこは古びた一宇の堂内……吹上の石神堂と同じように、やはり一個の石神が祠ってあります」

「ウム、その堂内に抜けていたのか」

「されば……出て見ますと、人も通らぬ森の中で、何処かの丘と思われました。で、坂を下ると、程なく例の切支丹屋敷の門前に出ましたので、ほぼ地点の見当もつきあれから急いで参った次第です」

「ヘエ、するとそこは、あの切支丹屋敷の近くなんですか」

釘勘はかつて見た、目白の丘の石神堂を思い合せて、ふしぎな念に衝たれていました。万太郎は話頭をかえて、釘勘に向い、

「して、そちが今日、次郎と共に、お茶の水を下って来たのはどういうわけじゃ」

「それも、ただ今細かにお話しようと思っていたところでございます」と話は釘勘の方に移って、彼の口から、その後、次郎が突き止めたお蝶の行動や、日本左衛門を大川端の隠れ家から逸したことなどを語って来て、

「――すると、前夜のことでございます。神田川の土手下から妙な侍がお茶の水の崖へ這い込んだという、番屋からの知らせがありましたので、それを探しに参ったところが、夜ッぴて、舟で見て廻りましたが、何の手懸りもなく引っ返し