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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁
それも軽い戯れでした。
くったくのない蝶々のように、月江とおりんの主従は、それから次郎の姿をさがしに、下町の坂を北の方へ向って駆けだして行く。
「あら、また坂がある」
「熱海の宿は坂ばかりでございますね。それも、みんな短い坂道ばかりが……」
「武蔵野には坂がない」
「あんな海もございませんのね」
「りんや」
「はい」
「次郎はいッたいどこへ行ったのだろうね」
「さあ――こッちにも見えませんが――また遠ッ走りをして、走り湯の権現様の方へでも行っているのじゃありませんかしら」
「おや、あそこに沢山人が見える」
「ほんとに、たいそう人がたかッておりますこと」
「居るよ、あの中に。きッと次郎も交じッているんだよ」
「行ってみましょうか、お嬢様」
「うしろから行って、そッと、目をふさいでやると面白い!」
「それよりもわッと背中をたたいておどかしてやりましょう!」
軽快な姿が、袂に風をはらんで、また短い坂を駆けました。
そこは野中の地蔵とよぶところで、晩には、沖の潮鳴りがきこえるほか、人も通らない湯町の端れで、ただ一軒、漁師の網小屋がぽつんと建っています。
網小屋のそばには、馬子や漁師や往来の者の湯浴みにまかせる野天風呂があって、今も、紫雲英のさいている原ッぱへ、笠やわらじをぬぎすてた旅の人が、草の葉の浮いている青天井の温泉につかッて、