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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁

青空文庫

といいかけた時、何か、ぶつけたような物音と女の声が、突然、後ろの戸を倒して中の火をあおッたので、

「おうっ!」

と、釘勘も伝吉も、煙に吹かれて、思わず左右へおどり立ちました。

そこの、魚見小屋を背なかにして、外に立っていたのは、遂にここまで追いつめられてきた、狛家の息女と小間使いのおりんです。

おりんは歯の根もあわずに月江の胸にすがっている。

その両女を取巻いて、磯くさい人間ども、幾人ともわかりません――悪魚の群のようなのが、飢えた目をして、今にもいどみかかりそうなけしき。

「りんや、心配おしでない」

と、月江の片手が帯の懐剣をさぐッたせつな、目まぜをし合ったあぶれ者の二、三人が、いきなり、かの女のうしろへ廻ろうとしましたが、そのひとりが、懐剣で頬をかすられたかと思うと、魚見小屋を内がわへ外して、

「あっ」

と、中へころがり込む。

とたんに。

「こいつらッ」

意外な大喝を投げて、そこから吹き出した松葉の煙といッしょに、二本の十手がおどッて出たので、

「わッ」と、驚いたあぶれ者の影が、一時に小屋の前をひらいて、

「野郎、なんだてめえは!」

と、虚勢を張って立ち直りましたが、伝吉が、