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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁
を念の為に、もう一度よく調べて見ようとなって、金吾に手燭をもたせ、室外へ出て来ると、
「若殿、すぐに錠を持って参りますから、暫くここで」と、金吾が納戸へ走ろうとします。
「いや、書物蔵ではないぞ」
「ほ、では何処へお仕舞いなさいましたので」
「誰も気がつかぬ所だ」
「――と申すと、書院の袋戸へでも?」
「ウム、床の間じゃ」
「えっ、あんな所へ」
「心配いたすな、兄上が大事にしている出目洞白の面箱の底へ、二ツに折って入れこんでおいた」
面箱が紛失している。
北口の杉戸に土足の痕がある。
曲者が忍んだ。
すわ! と騒ぎはじめたのは、それから寸刻の後でありました。
変を聞くと、
「なに洞白の面が?」
と、誰よりも驚いたのは、当主であり万太郎の長兄である尾張義通で、
「洞白の面が盗まれたとは、そりゃまことか! 曲者は捕えたか!」
義通は青くなって、宿直のあわて乱れる中を、近侍と共に遠い母屋から駆けつけて来る。
かれは病身、息を切っています。
見ると、紙燭を持って、舎弟の万太郎が書院の床壁を茫然と眺めている。まったく、胆を奪われたていで、義通がうしろへ来たことにも気がつかない。