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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁
と、くだけていうと、金吾は突然に、
「釘勘ッ、せ、拙者は、そちに今ここで会わせる顔がない! ……面目のうて会わせる顔がないのだ……」と、にわかに感傷に走って来た声をふるわせて、深く顔を押しかくしますと、
「は、は、は、は。そう窮屈に考えるからいけませんや」
と釘勘は、抜きかけた煙管を持って、骨ばッた金吾の肩をやんわりと押しながら、
「まあさ、そこへおかけなさいまし、武門のことは分りませんが、女出入りのあとしまつなら、こりゃお侍様の智慧よりも、はばかりながら町人の方が遙かに勝っておりますからね」
と、あくまで金吾の苦しみを見ぬいている、苦労人のことばです。
さりながら、好意も時には罵倒よりは胸に痛い場合もある。
春ながらここは寒い。
杉の夜露が襟もとを打つ時は、思わずゾクとしてきます。
「ぶしつけな申し分かも知れませんが、あっしとあなた、浅い御縁じゃございませんな」
そこで、釘勘は火打を磨る。
すぱりと、一服つけて、
「――金吾様、どうか今夜はひとつ、明らさまにおっしゃって見て下さいませんか。実をいうと万太郎様もかくいう手前も、あなたの心もちが分らねえんです。