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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁

青空文庫

怖るべき殺気に吹かれて、

「あッ!」

と、日本左衛門が気がついたのも髪一筋の際どい瞬間で、何者ぞ、

「おのれ! 卑怯ッ」

という不意なかすれ声に、思わず踵を蹴りました。

ダッ――と横に跳ね飛ぶと、砂地へ半身埋めこんだように身をかがめ、当麻五郎のだんびらを守り構えの青眼に、二ツの眸は剣のミネをおもむろにたどって、月光をチカッと射る鋩子の先から、そこに生えぬけた対手の正体を見直しました。

その間を波の叫びが、

「おお! さ、相良さん――相良さん――」

お粂の狂気した声を交ぜて通りぬける。

と知るや日本左衛門は、伏せ身の青眼を少しもくずさず、そのまま体をヌーとのばして、

「ウウム、来たなッ金吾」

と、かえって心の落着きを取り戻していう。

はッはッ……という荒い息づかいが、かれの剣前に聞こえます。そして海をうしろにし、月に鬢の毛をそそけさせて、柄に手をかけている若者は、相良金吾でありました。

卑怯――と初手に呼びかけたところを見ると、日本左衛門がお粂を追ッている間、金吾はしばしばよびとめていたのに違いありませんが、それと知ることの遅かったのは、お粂はもとより日本左衛門も、かなりカッとしていたものに相違ない。