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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁
お粂の弱みを突いて、うまく話の水を向けた伊兵衛は、
「仮に日本左衛門のことがないにしても、これから先の旅先で、女ばかりで興行して歩くうちには、ずいぶん難儀が多いものだ」
と、親切顔に、うまく話を取り結ぶところへ、馬春堂もそばから体よく相槌を打って、
「そうとも、だから大概な小屋には、やくざな浪人の用心棒が、ひとりや二人は必ず楽屋にころがっているものだ」
「どうだいお粂、実あおれ達も、例の一件で、当分江戸から足を抜いている体だ。一ツその用心棒格で、おめえの一座を見てやろうじゃないか」
「よかろう、それは是非ともそうありたいものだて」
と、馬春堂は自分が相談をうけているようにのみこんで、
「さしずめ、馬春堂先生を軍師とし、伊兵衛を旗本として連れてあるけば、嵐粂吉の一座も天下に怖いものなしじゃないか。――なあに、場合によれば、わしが木戸へ坐り、伊兵衛がお手の物の笛ぐらいは吹くさ」
――などとしきりに打ち解けて来るので、お粂も馴れぬ興行ではあり、かたがた日本左衛門の手先につけ狙われていると思えば、この二人まで敵に廻したくはありません。
とやかくして、次の興行地へ旅立つ支度をしている間に、川越の景気を聞き伝えて、例のいかもの部屋の太夫元へ、粂吉一座を買いに来る地方の飛脚が頻々であります。