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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁
「それは、悪いこととは知っていたけれど、そうしなければ、男が自分のものになっていない――その私のつらい気もちも察してください」
「たとえ、この期になってなんと言おうと、自分の武士を立てるためには、そちを生かしておくことはならないのだ」
「自分の武士を立てるためなら、どんなに思っている女だろうが、殺してもかまわないと言うんですか。もし相良さん。私とお前さんとは、たとえ十日でも二十日でも、あの熱海の湯治場で、夫婦も同じように暮していた仲じゃあないか。今さら、男らしくもない、そんな後悔をして私を斬ったところで、二人の縁が洗われるわけでもなし、あなたの名折れが世間へ立つわけでもないでしょうに」
「いいや、立つ。立派に立つ」
と、うしろで叫んだのは秦野屋です。
お粂は、いまいましそうに、九兵衛を睨んで。
「お前はまた、どこの化物さ」
「江戸の甲斐絹屋と言ったなあ口から出まかせで、おらあ日本左衛門とつき合いのある、秦野屋九兵衛というおやじだ」
「えっ、じゃ、厚木の秦野屋かえ」
「とんだお役廻りを内職にやっているので、おめえが勘づかなかったのも無理じゃねえ。だが、そんな事はさておいて、丹頂のお粂ともあろうものが、あきらめの悪い泣き言はどうしたものだ。