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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁

青空文庫

こういう女だけに、まったくおそろしい思いかたで」

「が、九兵衛、いつまでこうしてもいられまい」

「ヘイ、そのさいそくは、あっしの方からするところでした。これからすぐに、鼻寺の方へ行かなけりゃなりません」

「うむ、そこへは先程も、雲霧と四ツ目屋が連れ立って参ったようだが」

「そうです。甲府町方の目をくらますため、日本左衛門がこッそりとかくれている穴です。実あ、そこへあなたを手曳するつもりで、お粂もここまで誘い出しておきましたので」

「そうか。さてはあの寺内に、日本左衛門がひそんでおったのか。よしッ」

にわかに、金吾の眼底には激しい争闘心の前駆が血走ります。そして彼は、お粂のからだのそばに膝を屈して前差の小刀を抜くが早いか、その首を断って左の手につかもうとしました。

「あっ、もし」

と、九兵衛はその手元を待たせて、

「どうなさいます、そいつを」

「星影の谷あいで誓った証拠だ。これを日本左衛門の前につきつけて、今宵こそ、有無をいわさず雌雄を決するつもりである」

「そいつは少し時代過ぎましょう。何も、日本左衛門がああ言ったからって、そんな生々しいものを、土産にかかえてゆくこたアありゃあしません。