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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁

青空文庫

「ええッ」

と、相手はもがいて、ハタき捨てようとする。

そして、その手にする大刀が、耳の近くを幾たびか空を斬ってうなりました。

が――餅のようにねばり付いた釘抜きの体は、容易に離れないで、そのまま、よろよろとうしろへ引き戻しましたが、やにわに、相手が膝をついて、肩をすかしたからぜひもありません。はッと思うとたんに、柔術の無双ほどき、ずでんと、前へうッちゃられる。

「くそうッ」

と、仆れながら釘勘の十手が、いきなり横に払って、敵の片脛をびゅッと打つと、

「あっッ」

跳ぶというよりは落ちるように、相手はうしろへ捨て刀をくわして、窓の下へ地ひびきを打たせました。

ところへ、先に庭先へ投げすてられた万太郎が、跳ね起きてそこへ来るなり、最前の相手と見ましたから、

「おっ、居たかッ」

とおめきながら、前の手痛い目も忘れて、無二無三に斬りつけてゆきます。まことに、この若殿の剣法なるものは、しばしば実例が示すとおり、釘勘の目でさえハラハラするものでありますが、長袖の大名そだちに似合わない、その無二無三流な意気だけは、愛すべきものであるやもしれません。

果たして、一方の者は、万太郎としては烈々な気込みで斬ッてかかった刃を、二、三合ほどチャリンと軽くはねつけたばかりで、まッしぐらに、彼方へ向って駆け出すのを、彼はまた得意となって