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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁

青空文庫

「おや頭かずがひとり不足だぞ。ここに薬にあてられているのは、雲霧と、四ツ目屋の新助」

「あっ、九兵衛という老いぼれめだ」

「逃げたな」

「さがし出せ。さがし出せ」

獲物を取った者や、光木をふり照らす者や、例の川添いをワラワラと駆け乱れました。

ヨハンの起き伏しする住居というのは「山の会堂」の裏の森で、森の中にぼやッと橙色の灯がともっている窓がそれです。

窓のそばには白樺の葉が、サヤサヤと寒そうな音をさせて揺れております。また、この家も用材のほとんどが、皮つきのままな丸太組みでありますが、屋根の曲線や窓の形に、どこか異国的な様式が見えるのは、やはりヨハンが建て方をさしずして、羅馬の田舎家でも写したのでしょう。

「お姫様、わたしを誰だと思いますか。おわかりですか? ……私の顔が」

ヨハンはこう言って自分の椅子を、お蝶の仰向いている寝台のそばへ寄せてゆきました。

ガバと、お蝶は起き上がって、

「あら?」

と、天井を見たり、窓を見たり、そして最後に、ヨハンの顔を、穴のあくほど見つめている。

「びッくりしたでございましょう。私はヨハンでございます。あの切支丹屋敷の牢にいた……」