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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁
「それゆえ、伊兵衛を召捕って来ようというのか」
「ひとつ、不意をついて、お手当を食らわせてまいります」
「つまらん話だ。止せ止せ、この金吾も彼のためには、一時難儀をこうむったが、仮面が手に返った今日となって見れば、縁も怨みもない、他山の石だ」
「どうして、どうして、この釘勘の役儀から言えば、姿を見たのが百年目というやつで、決して、見のがせない兇状持ちの大物でございます」
「その筆法で往来を歩くと、見る者、摺れちがう者、皆そちの目には、何か兇状の影がついて見えない人間はあるまい。――あまり埃の中の微虫まで見るものはそれだから困る。まあ、坐るがいい」
「どうも相良様、今日はひどく目明しをこきおろしますなあ」
「万太郎様を初め、おれ達二人は、日本左衛門とお蝶の落ちた先をつきとめるほか、しばらくは決して何へもわき目を触れてはならぬ場合だ」
「じゃ、伊兵衛のやつは、今日のところは見のがしてやるとしますが、何と冥加のいい奴だろう、御覧なさい、あのとおりお天気な顔をして夢中で笛を吹いていますぜ」
「しかし、自分にはよく分らんが、盗賊の隠し芸にしては、上手なものではないか」
「そのはずでございます、あいつは元、阿佐ヶ谷神楽の笛師の方が本業なのでございますから」