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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁

青空文庫

「見えましたぜ、先の影が」

「えっ、追いついたか」

と、万太郎主従が、彼の指さす先に目を辿らすと、なるほど、そこから遙か峠裏に見下ろされる沢辺の道を、一箇の編笠すがたが、孤影を風に吹かせて歩いて行きます。

秋の夜双紙

その時その姿は、遙か遠くにしか見えませんが、編笠のうしろ姿が、日本左衛門に違いないと見たので、

「それッ、急げ」

というが早いか、金吾も万太郎も一散に峠の下りを駆け出していました。

しかし、左程にもない距離に思われても、歩いてみると案外、紆余曲折のあるのが山道の常で、日本左衛門の飄々乎たる姿を、沢辺の向うに見ていながら、三人がそこへ降り着くまでにはかなりな時間がたっている。

沢の渓流に沿って、最前、日本左衛門を見たあたりに来て見た時には、もうその影は行手の山蔭にかくれて先に見当りません。

「万太郎様、万太郎様。あまり急いでおいでになると、先へ行って息がつづかなくなりますぜ」と、釘勘はしきりに落着こうとしますけれど、

「いや、もう一息急げば追いつくに違いない。金吾つづけ」と彼の足どりは、容易に平調に返ろうとはしない。

ぜひなく、釘勘も大股になる。