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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁
だが、安心するがいい、髪結の鶴吉は決して、宗門役人などに懇意はねえんだから」
彼が独りでベラベラと喋舌っている間に、お蝶は眉をよせながら、帯の間に手を差し入れて、じっと其処へ屈み込んでしまっている。
「おや、どうしたんだね」
「もう話すのはいやですから、あっちへ行って下さいよ」
「どうもおめえは素ッ気ねえ人だな、何も、口説いているわけじゃなし、断ることはないだろうに。……おや、腹でも痛むのかい」
髪結の鶴吉とかいうこの男を、お蝶はよく覚えておりませんが、しきりと馴れ馴れしく話しかけて来て、
「とにかく、家へおいでよ、相談にも乗って上げようし、悪いようにはしないから」
親切そうに誘うので、お蝶もその気になりました。
行ってみると鶴吉の家は、お厩河岸に近い露路裏で、ちょっと小綺麗な格子づくりです。
「おや、お帰りかえ」
長火鉢には鶴吉より年上らしい四十前後の大年増が、しどけない伊達巻に丹前をひっかけ、燗銅壺に入れるばかりの銚子を猫板にのせ、寝白粉をつけて待っているといったふうな家庭でありました。
「さあ、お蝶さん、ずっと火鉢のそばへ寄んな、誰も遠慮はねえ家だから。