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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《神州天馬侠(しんしゅうてんまきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 頁

青空文庫

と、同時に、上からも身軽にヒラリヒラリと飛びおりてきた蔦之助。

龍太郎は、黒鹿毛にまたがって、鞍壺のわきへ、梅雪をひッつるし、一鞭くれて走りだすと、山県蔦之助も、遅れじものと、つづいていく。

一ぽう、白旗の宮の前では、穴山の郎党たちは、すでにひとりとして影を見せなかった。そこには凱歌をあげた忍剣、小文治、民部、咲耶子などが、あらためて、伊那丸を宮の階段に腰かけさせ、無事をよろこんでほッと一息ついていた。人々のすがたはみな、紅葉を浴びたように、点々の血汐を染めていた。勇壮といわんか凄美といわんか、あらわすべきことばもない。

なかでも忍剣は、疲れたさまもなく、なお、綽々たる余裕を禅杖に見せながら、

「木ッ葉武者はどうでもよいが、当の敵たる穴山入道を討ちもらしたのは、かえすがえすもざんねんであった。いったいきゃつはどこにうせたか」

「たしかにここで拙者が一太刀くれたと思いましたが」

と小幡民部も、無念なていに見えたけれど、伊那丸はあえて、もとめよともいわず、かえって、みなが気のつかぬところに注意をあたえた。

「それはとにかく龍太郎のすがたが、このなかに見えぬようであるが、どこぞで、傷手でもうけているのではあるまいか」