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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《神州天馬侠(しんしゅうてんまきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 頁
碓氷の合戦は甲軍の大勝となって、敵将の憲政の首まであげたので、以来、信玄はその鷲を館にもちかえり、愛育していた。信玄の死んだあとは、勝頼の手から、供養のためと恵林寺に寄進してあったのである。ところがある時、檻をやぶって、民家の五歳になる子を、宙天へくわえあげたことなどがあったので、扇山の中腹に石柱をたて、太い鎖で、その足をいましめてしまった。
幼少から、恵林寺にきていた伊那丸は、いつか忍剣とともに、この鷲に餌をやったり、クロよクロよと、愛撫するようになっていた。獰猛な鷲も、伊那丸や忍剣の手には、猫のようであった。そして、恵林寺が大紅蓮につつまれ、一山のこらず最期をとげたなかで、鷲だけは、この山奥につながれていたために、おそろしい焔からまぬがれたのだ。
「クロ、いまこそわしが、おまえの鎖をきってやるぞ、そしてその翼で、大空を自由にかけまわれ、ただ、おまえをながいあいだかわいがってくだすった、伊那丸さまのお姿を地上に見たらおりてゆけよ」
そういいながら、鎖に手をかけたが、鷲の足にはめられた鉄の環も、またふとい鎖も断れればこそ。
「めんどうだ――」と、忍剣は鉄杖をふりかぶって、石柱の角にあたる鎖をはッしと打った。