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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《神州天馬侠(しんしゅうてんまきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 頁
瓶はくだけ、秋草はとんだ。
みじんになった陶物の破片を越えて、どッ、泉をきったような清水があふれだしたことはむろんだが、猫もでなければ呂宋兵衛の正物もあらわれなかった。
水に足をひたされて、ハッとわれにかえれば、これは野陣の人々の飲料水である。反間の敵に毒を混じられないようにわざと、花壺に見せかけておいた生命の水にちがいない。
「逃がした……」
なにか、忍剣のあたまは、そのとき、霧がかかっているような心地だった。そして、ぼうぜんとしていると、張りまわした幕に、ソヨソヨと小波のような微風がうごいて、その幕のかげあたりを、聞きなれない南蛮歌の調子で、口笛をふいて通ってゆくものがある。
「あッ」
銀の鞭の音がする。
そして、
「あははははははは……」
まぎれもない、怪人和田呂宋兵衛の人をバカにしたような笑いごえだ。
神馬草薙と早足の男
一
あざ笑う声はする。
銀の鞭が幕のうしろを歩いている。
だが、霧のようなじゃまな幕、それにさえぎられて、けんとうもつかねば、すがたも見えない。
忍剣は地だんだを踏んで、幕の波をさぐりかけた。しかし、瓶の水が表のほうへいっさんに流れだしていったため、それにおどろいた徳川家の諸士や、溜り場のむしろを水びたしにされて跳びあがった、れいの菊池半助、鼻かけ卜斎、泣き虫の蛾次郎、そのほかお小姓とんぼ