輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
以来、右馬介とは引き裂かれて、彼のうけた処分も消息も、ここには皆目知れていなかった。
「……お。鑁阿寺の鐘か」
彼はむッくり起き直った。毎晩、この音は腸に沁む。――母を思い出すのであった。――鐘の余韻が消えいるまで、高氏はじっと頭を垂れていた。
――と、それからすぐだった。裏手の方で木でも裂けるような響きがした。つづいて鹿垣の鳴子の鈴が風もないのに鳴った。
「やっ?」
身を刎ね起して、彼が縁さきまで出た時である。裏の切岸から渡良瀬川の流れへかけて、人影がみだれ合っていた、松明の火も走り廻ッている。警固番の手勢に違いなく、声々に。
「そこらだ。その辺」
「いや、もういない」
「上へは、越せぬはず」
「逃げたか」
「それ、向う河原の方へも、手分けをしろ」
――高氏は水を浴びたように立ちすくんだ。誰か自分へ近づこうとこころみた者があるにちがいない。南無三、逃げてくれ、逃げ果おせてくれと、彼は祈った。
直義は、惜しくも兄の高氏へ、近づきそこねた。
根気よく、宵の頃から窺って、たしかに兄のいる所の灯と見た千手院の鹿垣へまでは、すがッたのだが、そこの鈴縄に、うかと身を搦まれたのが運のつきだった。