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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

「おう、やはり足利殿の御家中だったな。われらは上杉殿の郎党、主命にて、これより足利表へ急ぐ早馬の者でおざるが」

と、これは意外なことばだった。

「輿を降ろして給も」

清子は、降ろさせた輿の内から、三名の姿へ。

「いま聞けば、上杉殿より足利表へ急ぐ使いの者とか。……?」

「御意にござりまする」

一人が頸にかけていた革苞から一書を取出して。

「鎌倉を立つ折、お主の仰せには、途中、北ノ御方の旅輿に出会うかもしれぬ。気をつけて行けとの御意でござりました……が、あやうくただいまは」

「オ、こなたは知らず、つい、駈け交うところであったの。……して上杉殿には、都から御帰府の後も、お変りないか」

「以来、一日のお憩いもなく、いちばいお忙しげな毎日を見ておりまする。――お下向早々、高氏さまの不当な御蟄居が、そもいかなる幕府の御嫌疑によるものなりやと、その御詮索の奔命やら、要路の方々に迫って、いちいち御直談をおとげあるやらで……」

「ああ、さまでに」

「折も折、そこへ新田ノ庄より幕府の内へ、早馬の上訴でした。――で、御処断によっては、足利家はお取潰しだろうとか。イヤそれには服すまいとか。