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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

やがて右馬介は、いとまを告げて扇ヶ谷を立って行った。そして翌日はもう、今宿から相模野の野路を、北の方へ急いでいた。

しかし、両三日の大雨の後とて、帷子川も名もない野川も、縦横にあふれ走っている。本街道とはいいながら、ひと通りな難渋さではない。

「これでは、お旅路も遅れているはず」

高氏の道中も察しられた。身軽な彼すら、行き悩むこと再々だった。――が、同日の夕方ちかい頃には、高氏の同勢らしい一行を彼方に見かけた。

武蔵の府中から、多摩川をこえて来たかと思われる一群の人馬がある。主従四、五十騎みな蓑笠すがたで、馬の脛も、徒士の小者も、泥ンこだった。

「やあ。それへおいであるお人々は、もしや」

右馬介は、駈け寄って行った。

そして、あぶなく。――高氏さまの御人数ではないか。と次の大声で、呼びかけてしまうところだった。

「あっ、違った?」

彼は急に足をすくめた。戸惑ッたのはいうまでもない。慌てて並木の木蔭へ身を交わした。

足利家の紋は、丸の中に二引両。つまり丸に二本筋である。

ところが、眼の前へかかって来た人馬の笠印やら旅道具を見ると、俗に中黒という丸に太い一本筋の紋――。