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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

「こんな例があっては物騒千万。御座所ちかくに、白洲をおくのはよろしくない」

要路の声から、問注所を柳営外へ移したのは、それからだといわれている。――で、いまの所在地は、執権の亭館よりずっと遠く、北は源氏山から西は大町小路をへだて、橋ノ内には、万一、熊谷蓮生坊のごとき者が暴れ出しても慌てぬように、常備の詰武者もあるほどな広い一地域を劃されていた。

そして、どんな大身も、ここでは一被告か一原告である。三名以上の供は連れて入れない。もちろん義貞も、部下を大町小路にとどめ、規定の従者だけを伴って、所内の装束屋敷に入った。

もとより罪人ではないので、客の来訪や出入りは自由だった。これが囚人ならここへは来ない。直接、侍所ノ別当へ廻され、断獄されるまでである。義貞の宿所には、その夜、客と彼の笑い声がさかんにしていた。義貞の如才のなさは、鎌倉にも多くの知己をえているらしい。

やがて、翌日。

高氏は、義貞よりも、まる一日遅れて、ここへ着いた。

おなじ控えの装束屋敷へ入ったのだが、しかし義貞とは顔も合せなかった。建物そのものの棟が、顔を合せぬような布置にもなっていた。