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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
地蔵の両面とは、つまりは、そのままこの又太郎高氏のことだった。わが子の両面をよう知っている母上が、それで、たびたびこのわしに」
彼はその日、心にきめた。母のことばに従って、地蔵菩薩を以て終身の守護にしようと思ったのである。
六波羅はもう夕の灯だった。彼の姿を見ると、右馬介はすぐ侍部屋から走り出て迎えたが、なにか冴えない容子ですぐ告げた。
「若殿。ついにここのご宿所を嗅ぎつけてまいりましたぞ」
「嗅ぎつけて。……誰がだ」
「大晦日の小酒屋での」
「あ。あの犬家来どもか。それが」
「探題殿へ訴え出たため、検断所から何やら御当家へきついお沙汰のようです」
「足利又太郎と知ったのか」
「そこのほどは分りませぬが、上杉殿には、甥どのが立帰ったら、すぐにも旅支度して、東へ帰れとの仰せなので」
「伯父上は、奥か。――いや旅支度など急がずともよい。ちょうどおいでなれば、ほかにお願いもある。さは案じるな、右馬介」言いすてて、彼はすぐ奥へ入った。
「和殿の六波羅泊りも、はや二十日余りだの。洛中洛外の見物も、まずは、あらましというところか」
「はい。ここをわが家のように、わがままばかりして」