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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
それは彼の胸にもあった。もっと重大な、そして春まだ遠き氷池の下の望みがあった。
「お気はすすみませぬか」
「待ってくれい。いちど父上にも問うてみる。もう迎えてよい頃か、まだ早いか」
「いや大殿には、はや、ご安堵の態にすら見えまする」
「父もか」
「なお、お国元の母君からも、折返して、それはよい縁組、ぜひ、すすめて給もれとの、お文なのです」
「いったい、相手の家は」
「赤橋殿です」
「え。赤橋どの」
「妹君の登子さまを、ぜひ高氏どのに娶ってほしいと、守時様直々に、この憲房へ、折入ってのおはなしなので」
「あの妹君をか。……ふうむ、姫もそれは、承知のうえのことなのだろうか」
高氏は急に、本気になって、考えだした。
「御念までもありませぬ」
憲房には、甥高氏の言が、何とはなく、ほほ笑まれた。
「――登子さまの方でも、わが聟君となる人はたれか、それさえご存知なくして、お輿入を得心あろうはずもござりませねば」
「……そうだろうか」
高氏は、なお「どうして?」と、それにつけ加えたいほどな気がしていた。彼女がこの高氏をひと目見て……とまでは、うぬ惚れきれない。
それに先方は、執権の近親だ。