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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
ほんとには、お胸に落ちきれないんでしょう。ごむりはありません。けれど、今夜こそは、おはなしができまする。ああ、どんなに今日を待ったでしょう。やはり私は生きていてよかった。ねえ小殿、お聞きくださいませ。あれからのことを」
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藤夜叉が生んだ一子は、男子であった。
伊吹ノ城から遠からぬ近江国犬上郡の不知哉川の田楽村で生れたので、名も“不知哉丸”と、かりに名けられた。
当然、義父の花夜叉は、たれの胤かを、知らずにはおかない。――初めは、藤夜叉もかくしぬいたが、彼女が、嬰児に持たせた地蔵菩薩の守り袋は、足利織の摺箔に足利家の紋を浮文様としてあった。つつみきれず、ついに高氏の名も明かされた。
で、義父の花夜叉は、彼女とはちがった意味で、不知哉丸を可愛がった。
一座の旅歩きにも、不知哉丸は、田楽仲間の手や背なかで、交わりばんこにあやされた。楽屋では、笛や太鼓も、のべつ聞える。――母の藤夜叉も、乳をやるときのほか、ほとんど、なんの世話もなしに、くりくり育ッた。
この秋で、二年七ヵ月、かぞえ年で、三つになる。