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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
――黄煙は暁の辻を咽ばせ、四条方面の炎と共に、何も知らぬ洛中の庶民は、みな裸足で戸外へとび出していた。
さてまた、やがての六波羅は。
この朝、ぞくぞく縛められて来た人間で埋まった。
だが、常盤範貞も、彼以下の雑賀隼人や長井遠江らも、満足ではない。
「これらはみな、土岐、多治見の下郎、雑人ではないか」
「かんじんな左近や国長は自刃させ、足助次郎も取り逃がし、かかる召使どものみを、捕えて来たとて何かせん」
討手の将として向った小串と山本の両将は、
「げに、その段は、抜かり申した。したが、この雑輩の中にも、文談会の仔細を見聞きした者がないとは限り申さぬ。拷問にかけて、一人一人おただしあるも、むだではございますまい」
少々、むかッ腹気味に、抗弁した。
「それや、無益よ」
雑賀は、嘲って。
「これだけを、拷問にかけるなどは、たいへんだ。また、吐ざきもしまい」
「いや、無礼講の酒席に、月々よばれていた妓どもをしょッ曳いて来て、それらの妓に、面を検めさせれば造作はない」
「なるほど、それもいい考え」
これには手間暇もかからなかった。
その日、二十余名の遊女や白拍子が、女牢の前に長く敷いたむしろの上に、ずらりと坐らせられた。