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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

と、なったものだ。

これは、又太郎から、言い出したこととしても、こんなにまで飲ませてしまったのは、重々自分も悪かった、と思うしかない。

「若殿、若殿。もはや相客とて、たれ一人おりませぬ。さ、立ちましょう。除夜の鐘もそろそろ鳴る頃……」

又太郎は、やっと眼をさました。醒めた顔は、いとどあどけないほど若々しくて、ただまぶしげにニヤリと笑う。そして、直垂の袖ぐちで、顎のよだれを横にこすった。

「ああ、よいここちだった。右馬介、よほど長く眠ったのか、わしは」

又太郎は伸びをした。その手が、ついでに、曲がっていた烏帽子を直した。やっと現に返った眼でもある。

その眼もとには、人をひき込まずにいない何かがあった。魔魅の眸にもみえるし、慈悲心の深い人ならではの物にもみえる。どっちとも、ふと判別のつきかねる理由は、ほかの部分の、いかつい容貌のせいかもしれない。

骨太なわりには、痩肉の方である。顎のつよい線や、長すぎるほど長い眉毛だの、大きな鼻梁が、どこか暢びり間のびしているところなど、これは西の顔でもなし、京顔でもない。坂東者に多い特有な骨柄なのだ。それに、幼いときの疱瘡のあとが、浅黒い地肌に妙な白ッぽさを沈めており、これも女子には好かれそうもない損の一つになっている。