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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
が、ひとたび、武家の武断に出会ってみると、現実には全く手も足も出ない朝廷だったことを、いやでも思い知らされぬわけにゆかない。「いまいましさよ」との逆鱗もさることだった。
しかも、この先まだ第二波、第三波と、どんな圧迫があるかと観ている公卿たちは、昼夜、みかどの御無念そうな眉を繞って、大内裏の広大な無力の森のうちで、今はただ恟々と、ただ事の打開策に集議ばかりしている有様だった。
ようやく、何か打開の一案が見いだされたものであろうか。
その集議は、やっと、
「ともあれ、それに」
と、やや落着いて、夕べをさかいに、ひとまず諸卿は中殿(清涼殿)の昼ノ御座から西の渡殿を、休息のため、退がって行った。
やがて、お湯殿の上屋のあたりで、みかどのお声がしていた。「……廉子を呼べ」と、仰っしゃったようである。浴後の御髪やおん衣の奉仕に侍いていた女官のひとりが、
「はい」
と、后町の方へ、スリ足を早めて行った。
后町とは、女官たちのいわゆる御所ことばで、正しくは常寧殿、あるいは五節殿とよぶ。つまり中宮ノ御方や女御など、あまたな寵姫の起居している所で、五節ノ舞には、舞姫のためにもここの一殿が用いられる。