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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

これが何より道誉の言いたかったことかも知れない。

彼と土岐との、微妙な関係を知る者といえば、高氏一人あるだけと、道誉も内々、気味わるく思っていたに相違なかろう。――だが高氏の方では、そんな機会を利して他を失脚させようなどという気は毛頭持っていなかった。

むしろ今、彼の言いわけを聞いてから、初めて旧事を思い出し、そして、道誉のぬけぬけという厚顔さを、心のうちで、天晴れな奴とも思ったほどである。

「いかがであろう」

道誉は誘った。

「おさしつかえなくば、儂のやしきへ、ちょっと、お立寄り下さらぬか。路傍ではお話しできぬかずかずな話もある」

「かたじけないが、じつは、扇ヶ谷までまいる途中。いずれ後日にでもまた」

「それや惜しいが、上杉殿とのお約束があっては、お引止めもなるまい。そうそう。それで思い出したが」

と、道誉は、ちょっと、あらたまって。

「昨日、執権御直々に伺ったが、このたびは、かねて内々の御縁談が、いよいよ、公儀の御認可とも相成ったよし、なんともめでたいことと、共におよろこび申しておる」

「ははあ」

と、高氏は他人事みたいに。

「はや、お聞き及びか」

「太守(高時)のお口から洩れたこと。