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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
憲房は、急に笑い出し、
「いかにも、婆娑羅な彼の思いつきそうなことではある。……とはいえ、ともあれ佐々木の名代。西の書院へ、お通ししておけ」
「はっ」
と、取次は小走りに退がって行く。そして、憲房もまた、
「どれ。……会わぬわけにもまいるまいて」
と、起ちかけた。
すると、高氏がすぐ、
「いや、私が会いましょう。伯父上、その使者には、高氏が会いますから、どうぞ、おまかせおきを」
と、やや慌て気味に、さえぎった。
そして、いぶかるような父貞氏の眼を横顔に感じながらも、高氏はしいて大股に、自身、書院の方へ出て行った。
何気なく見せて起って来たものの、彼の一歩一歩は、茨を心で踏むような痛さだった。「……ひょっとしたら?」と予感されるものがある。もし予感が外れてくれればよいが。
先ごろ、道誉が途上の別れ際にいったことを、あらためて思い出さずにいられなかった。「……めでたい蔭には、それを悲しむ野の花もおわそうに」と、彼奴はいった。――決して、故なくして出る言ではない。
「もしや、婆娑羅めが。……いや、まさか?」
小心な自己、弱い自己が、その間、だらしなく彼にも意識されていた。