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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

お眼を怒らせて、愚鈍な奴かな、そんな性根で、なんで一道を習びえようぞ、それでも汝れは、人なみの子か。もう破門じゃ。いっそ他の傀儡師に就き、大道芸人の弟子童となり、笊を持ッて銭乞いでもするが、その性に、ふさわしいぞ。……くやしいか。くやしくば人なみに励んでみよと」

「覚一。もういわないで」

「おや。お母あさまは、何をお泣きになるんですか」

「だって。……聞くだにもう辛いものを」

「ごめんなさい。お母あさまを辛がらせようとて、こんなことを、初めて、お聞かせしたのではございません。覚一には、この頃また、その恐いお師匠さまが、無性に恋しゅうて、ならないのでございます」

「そんな酷いお師でもか」

「ええ、なぜかお慕わしいのです。都から帰ってからは、覚一は毎晩、お母あさまのふところに抱かれて眠り、なんの不幸も知りませぬ。けれど、せっかく修業中の芸の道は、とんと崩れて、ちかごろ駄目になりました。下手になった、勉強もしなくなった。そしてわがままばかり募って来て……と思うにつけ、かつての日、琵琶の撥で、私の懶惰を打ッて下すったお師匠さまが、恋しくてならなくなるのでございまする」