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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
とっさに、道誉は顔をよけていた。――ために彼女が浴びせた酒の飛沫は、彼をそれて、執権高時の横顔へパッとかかった。
「アっ。……」
高時は、ぶるっと首を振って、耳の穴へ指先を入れていた。
耳へまで酒が入ったものらしい。その手で襟くびも撫でまわす。途端に何か、理由なきおかしさが、彼をくすぐッたものか、小児のようにクックッと笑いかけた。
――が、道誉は、仰天せざるをえない。
「こは、畏れ多いことを」
あわてて、自分の袖で、高時の胸やら膝を拭き廻った。近習のすべても、一せいに、
「ぶ、不礼者めが」
と、藤夜叉の姿一つを睨まえて呶号した。そして四囲のそれに気づくと、高時もまた、怒らねばすまぬように、とつぜん、形相を一変して、
「しゃッ、女郎め」
と、青筋たてて、突ッ立ちあがった。
「この慮外者、甘やかせば図にのッて、天下の執権職を愚にしおったな。おのれ、手討ちにしてくりょう。呵責の美とやらを試してくれん。近習ども、藤夜叉を大庭へ引きずり出せ」
大喝と同時に、その茵から不意に、敏捷な犬の如く、どこへか身をひるがえした。
側臣たちは、どぎもを衝かれ、あッとわれがちに座をうごいた。