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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
――山伏殿にはかかる民の杞憂はご一笑ものか。……アハハハハと、若法師は仰向いて笑った。彼の諧謔につりこまれて、山伏もまた腹を抱えた。
すると、ふと。
そこから少し離れた路傍でも笑う声がしたので、二人は驚いて、口をつぐんだ。どこか都びた風采の旅の主従が、さっきから聞き耳すましていた風だった。
これは、いけない。
山伏と若僧とは、すぐ路傍から立ちかけている。
二人とも、人なきものと安心して、つい鬱を吐いていたらしいが、たとえ放免筋(諜者)でなくても、ヘタな人間に聞かれると、いつか密告されていて、後日忘れた頃に引ッ張られた――などの例は毎々眼にも見、耳にも聞くところなのだ。
宮方びいき、鎌倉同調、いずれにしろ、現今、それに神経をつかッていない者はない。
――で、この二人もたちまち声を消して、奈良街道を、西と東に別れ去ってしまったが、おなじ路傍に脚を休めていた藺笠、膝行袴の旅の主従も、また、
「はははは、何を慌ててぞ、あの両名は。……どれ、わしたちもそろそろ行くか」
と、やおら、腰を上げ出した。
「弁ノ殿」
歩き出すとすぐ、若い郎従は、主の人を、そう呼んだ。