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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

だから慧眼な史家は、大江時親の実在も疑い、正成の師事などもみとめていない。それに従来の楠公伝や、郷土史自体が時親の素姓については、具体的になに一つ傍証していなかった。――こういう事情になっている。

で、作者は。

正成の弟、正季の口をかりて、大江時親、すなわち毛利時親の素姓を、前段でやや語らせたわけであるが、事のついでに、もうすこし、時親の実在と、その人の生涯とを、手みじかに、この一章で、閑話することをゆるされたい。

時親を、大江氏で呼ぶのは、たとえば、正成を楠木正成といわずに、橘ノ正成とよぶようなものである。大江は族姓で、毛利時親という方が正しい。

その毛利姓は、相模ノ国愛甲郡毛利から起っている。

尊卑分脈の「大江氏系図」によると、大江広元の子季光以後、愛甲郡毛利に住み、ほどなく越後南条の領国へ移って行き、経光、時親、と代をかさねている。

そして、この微々たる家が、やがて信長、秀吉などの戦国時代にいたっては、かの毛利元就や輝元を生み、またその支流からは、吉川元春、小早川隆景らの輩出を見るのであった。

しかし毛利家の「毛利系図」の上では、相模愛甲郡時代の季光や、越後に任国していた頃の経光などは祖流に加えず、河内のおくへ隠遁した――つまり正成の住居、水分と二里ほどの近所だった山家の人――時親を以て、