輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
いたものだった。
いちどは小鳥の起つような姿態をしめし、すぐ逃げ去ろうとしたかのようであった。――が、思い直したふうで、ふた足三足、近づいて来た。そして恐々身をすこしかがめて訊ねた。
「もし。……どうかなすったのでございますか。どこぞおかげんでもお悪いのですか」
「…………」
高氏には、じぶんの眸がまだ信じきれない。彼に見えていたのは羅浮仙(梅の精)のような佳麗なひとだった。「……さるべきおひとが、こんな深夜もすぎた頃、ひとりでたたずんでいるわけはない」。彼は答えとする必要以上に、つよく頭を振って言った。
「べつに、どこも」
それから、また……
「病気などではない」
つぶやいて、指でこめかみの辺りを抑えた。顔が青いナ、とひとりで思う。
すると彼女は、もうひとつ近づいて来て。
「どなたかと思うたら、あなた様は、こよいの御主賓の……」
そう訊かれたときは、すでに高氏の酔眼にも正しい対象がつかまれていた。というよりも宵から彼の心にあった映像が突として眼の前でものをいっている驚きに揺り醒まされたといった方がいいかもしれぬ。
「あっ。……藤夜叉か」
「え。藤夜叉でございます」