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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

いつもそれには気をつかっている三位ノ局廉子がすぐ言った。

「お上のまぢかです。すこしたしなめてください」

「まことに」

侍座の洞院ノ公敏が、すぐ叱りに立ったと思うと、細殿の西の廂での出会いがしら、北畠具行のすがたに、ハタとぶつかった。

「や、あなたか、いまのあらい足音は」

「一大事だ」

具行は、息をはずませ、

「たそがれから、六波羅の広場、車大路などに、兵馬の気負いただならずと聞える」

「それは近頃、常時のこと」

「いや、二千余が、陣をわかち、一せいに馬を餌糧し、あきらかに、戦備のようだという物見の知らせ。……どうやら、さきに諸州へ発した密勅が漏れたか、持明院統のまたぞろな密告か」

「そ、それや、こうしてはおられん、ここへも」

「もとより、目ざすはここ。……お上には」

「本殿にいらせられる」

ふたりが、御座のまぢかへ入ってから、いくらもたたないうちだった。

漆掻きに身をやつした森掃部が、門の衛士に誰何されつつ、しいて中門まで駈けこんだので、蔵人たちとの間に、烈しい言いもつれを起していた。掃部はすべての咎めに耳もかけず、

「両宮のお使いです。花山院どのか、万里小路どのでなくば、御直書、おわたしはできません」