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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
正成が心したのはそれ。
水の手は、高塚山のふもとから城中へ引き、兵糧にはおよそ食える物は何でも山野から運び入れた。ただ河内地方は去年も今年もあいにくな旱魃で作物のみいりはよくなく、蓄備の郷倉も水分の土倉もその底は浅かった。
が、正成は、
「この冬さえ支えれば」
という見こしだった。
冬さえ越せば、その間に、かならず「変」が生じよう。変の起る可能性は二つある。
一は北条氏自体がいなみなく内にもっている自解素因の表面化であり、二には、各地の宮方が、ようやく腰をあげて、呼応の旗を上げはじめるにちがいないとする観測だった。
「それを待つまの支えだが、さて、笠置がそれまで保つだろうか」
これにたいする正成の答えはなかった。
しかも、あまたな人は死なすのだ。運を天にまかす愚は、正成もわきまえている。が、起ち上がりからすでに、彼の本意でない戦だし、もちろん用意もなかったのだ。やはり奇蹟を祈らずにいられない。
と、籠城後まもなく。
その日、近郷巡回の偵察帰りに、加賀田の隠者毛利時親に会ってきた弟の正季は、なにかの報告も終ったあとで、正成へすすめていた。
「兄上。……兄上にも、いちど加賀田へお越しあって、時親先生へお目にかかり、久々に先生の兵略や胸中のご意見なども、お叩きになってみては、どんなものでしょうな」