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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
とはいえ、極寒を火の気もなく、陽の目も見ない二た月あまりには、おからだは萎え、頬は蝋のごとく褪せて、お髪も伸びるままだった。そして一脚の机を前にした白衣すがたは、さながら趺坐の行者のようにみえる。
それも初めのほどは。
赤坂を脱して、みずからここへ捕われて来た御子の尊良やら、宗良親王やら、ほかの囚われ公卿も、たくさんおなじ棟にいたのであったものを、それも鎌倉の幕令で、みんな市中の武門へ“分け預け”に分散されてしまったのである。――かの始終おそば離れずにいた藤房すらも――もぎ離されて、他家に監禁される始末――。いらい帝の牢愁のお翳りはいとど濃い。
平家の頃にも、承久の乱にも、帝王の受難は、二、三にとどまらなかったが、なお幾らかの畏れと、いたわりや礼もあった。が、現下にはもうそんな仮借がない。それだけ、人心の荒びは烈しく、時勢も尖り立ってきたものだろうか。
と、侍側の二人はただ、嘆きから諦めへ、身も心も凍えさせていたところであった。そこへ、はからぬ火桶のゆるしで、七十日ぶりに炭火を見たうえ、夜になると二基の燭台まで差し入れられた。
「……ほう、灯とは、目がくるめくほど、明るいものだの」