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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
――折ふし高氏が遅れて、一つの席につくと、見るともない全員の眼が、少しうごいた。中にはそっと目礼を送るもあり、あえて眼中におかない態度を持している顔もある。
公卿も見えた。向い側に九人の公卿が居ならんでいる。その列の次に、佐々木道誉も坐っていた。
「居るな」
こっちで、思うと、
「…………」
ニタリと、道誉の方でも、薄ら笑みを見せたようにとれた。
なにかまだ、ちぐはぐな高氏の胸だった。すべての者が、日頃とはみな別人の顔をしていた。じぶんだけが異端に思われ、溶けこむのに、時間がかかる。
上座には、両探題の越後守仲時と北条時益のふたりが見え、なお鎌倉の上使長井縫之助、工藤次郎左衛門、二階堂信濃ノ入道らも居ながれていた。そして何やら声をひそめ合っていたが、
「では……足利殿がいま見えられたによって、かさねて申し告げるが」
と一応、すでにすんでいたらしい発表が、高氏のために、もいちどこう反覆された。
「かねて内々、後伏見、花園の二上皇へ、お諮り申しあげていた先帝ご処分の儀は、みゆるし、次のごとく降されましたゆえ、ここに御一同へ、披露な仕まつる」
仲時のあとに次いで、時益が条文の要を読み上げた。