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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

「いや、よくもぬけぬけと。しかし、ここは佐女牛の館とはちがう。なにもいうまい」

「ごきげん斜めでございますな。小右京どののことを、いまだ根に持っておいでなので」

「頼みにならん御僧などを、頼みにしたのは、こちらの思わく違いだった」

「その通り、殿のお目ちがいと申すものでした。世の女は、すべて、おれならどうにでもなるなどのお考えは、あらためねばなりませんな」

「戯れ口たたくな。ここは先帝のご幽室に近いぞ。道誉もまた、重任の身だ」

「されば、兼好も今日は、ぜひないお使いで参ったのです」

「よく使いを頼まれる御僧ではあるよ。して何事を」

「じつはゆうべ、野口ノ宿で、はしなく、皇子の宗良さまによそながらお目にかかり……」と、兼好は言いながら、ふところの一書をとり出して、

「これを、父の帝へ、とどけて欲しい。……せめてと、この兼好にお託しあって、今朝早く、牢船の上から加古川ノ宿を、いくたびとなく振り返りつつ、四国へ送られて行かれましたゆえ」

と、それの伝奏を、彼は切に道誉へ依頼したのであった。そして、道誉の承認をえると、

「今日は、これのみ。いずれご帰洛の頃を見はからッて、都であらためてまた、お目にかかりまする。