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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

と、彼はやがて、兼好に依頼された皇子のお便りを持って、侍者の間へ、それを託しに行った。

そして、侍者の千種忠顕へ、ついでに言った。

「ここは明朝出立いたします。――先帝には、ややお疲れぎみとうけたまわるが、ちと猶予ならぬ事情もあれば、女房がたへも、さよう、お触れおき願いたい」

旅の旅舎でも帝の幽室は、もちろん、昼夜なき武士どもの目で囲まれていた。

「のう。佐々木の紋は、四ツ目結とやらであるが、身のまわりは、四ツ目垣だの」

後醍醐はいわれた。

こんな自嘲のお戯れにも、三人の御息所――三位ノ内侍廉子、権大納言ノ局、小宰相――などはすぐ涙ぐむのであった。

しかしこの、おそばの三女性のあいだにも、微妙な感情の差は、ひそんでいる。

「小宰相には、心をゆるすな」

と、帝はあるとき、廉子に注意された。鎌倉の息がかかっている女とみてのご警戒なのだった。もとより廉子もとうに彼女へは一線を引いている。

いまし方。

帝のご座所には、忠顕が伺って、なにやらお伝えして退がった。きのうから、帝はご不予(病気)を口実に、一日でも長くここの逗留を延ばそうとしておられたらしいが、

「いまは、ならぬか」