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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

事の秘密は「増鏡」の「つげの小櫛」の巻に鍵がある。

――皇后宮(※(「女+令」、第4水準2-5-46)子)も、この頃は遊義門院と申す。

法皇(後深草)のおそばにおはしましつるを、中の院(後宇多)、いかなるたよりにか、いと忍びがたく思されければ、とかくたばかりて、盗み奉らせ給ひて、冷泉ノ万里小路殿におはします。

またなく、聞えさせ給ふこと、限りなし。

優雅に言いまわしてはあるが、これは一大事件だったにちがいない。

持明院統と、大覚寺統とは、帝位をはさんで、その臣下まで、真二つに対立し、百年、相容れぬ間である。

それなのに、後宇多は、反対派の皇女を、人をもって盗み奪らせたうえ、どこかへ隠してしまったらしい。――またなく、聞えさせ給ふこと、限りなし――と増鏡もいっているほど、以後の内紛や世間の取沙汰など、いかに喧しかった事だろうか。

だが、どんな非難も、ものともし給わぬ後宇多の恋は、同書「うら千鳥」に、

この程は、いどみ顔なる御方々、かず添ひぬれど、なほ遊義門院のみ志に、たちならび給ふ人は、をさをさなし。

と、はたからも見えるくらいな、ご熱愛ぶりだった。

が、さまでな君も、徳治二年ふとご病死された。